極私的 about:Eric Johnson

Posted on 12月 9th, 2005, by kirishu

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Eric Johnson(エリック・ジョンソン:以下EJ)

1954年、米国テキサス州生まれのギタープレイヤー。
このEJなる人物、日本じゃギター愛好家くらいにしか認知度が無い。
なんつーか、売れそうも無い音楽やってるんだよね。
ソロ名義でリリースするアルバムは、大抵がインスト半分、歌あり半分。
歌は自分で歌います(賛否あるけど、良い声をしていると思う)。
無理矢理ジャンル分けすると、AORとかになるのだろうけど、なんか違う感じ…
楽器を全くやらない人にとっては、ジャンルごちゃ混ぜで中途半端に感じちゃうかな。
やっぱりギター弾きじゃないと、楽しめない音楽だと思います。

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オイラがEJを知ったのは、1986年のギターマガジン誌のプチ特集記事。
(穴が開くほど読んだけど、いつの間にか紛失しちゃった…)
たしか「Tones」がリリースされた機会に、米国Giutar Player誌でのインタビューの転載と、ちょっとした奏法解説だったと思う。
「すごーくうまいけど、全く正体がわからないギタリスト」なんて紹介されていたっけ。
このインタビューの中で、乾電池による音の違いとか、プラグの材質の話などが出てきて、興味を持ったのが始まり。
また、奏法解説では、Zapの3連ベンドを持ち出して、「息継ぎしないジェフベックのよう」なんて形容もされてた。
今考えると、なんかおかしいね。

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件のGM誌は無くしちゃったけど
その前の号に記載されていたTones
のディスクレビューはありました。
1986年6月号

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EJというと必ず話題になるのが、そのトーンの素晴らしさ。
クリーン/クランチ/リード用に用意した3種類のアンプを駆使して、オールドストラトから繰り出される音色は、まさに夢のトーン。
特にスムースなディストーションのリードトーンは、「100万台のヴァイオリン」なんて喩えもされているけど、言い得て妙だと思う。
このトーンを実現するためにはこの人、容赦ないこだわりがあって、数々の逸話が伝説化しちゃっている。
具体的に挙げると、
・エフェクタの電池のメーカーにもこだわる
・電池スナップも音に影響する
・ペダルボードのベニヤ板も…

「ホントかよ!?」って思っちゃうけど、あのトーンを聞くと、本当なのだろうと信じちゃう。
ファーストアルバムの「Tones」が出た1986年頃って、デジタル制御のプリアンプやマルチエフェクターなどが身近になり、誰もがデジタル機器への転換を図ろうとしていた時でした。
今でこそ、Fuzzなんて溢れているけど、当時は絶滅しかかっていたわけ。
そんなご時世に、怪しいほど古いエフェクターとオールドストラト、オールドマーシャルで極上のトーンを出していたのは、ちょっとした話題になっていた。

リードトーンが良く話題にされるけど、クリーンとクランチも素晴らしいんだよね。
特にクランチで、強くかましたフランジャーや、FuzzFaceを踏んだブーミーな音は、「HiFiなジミヘン」って感じ。
使用ギターは 1954年製のストラトキャスターのイメージが強いけど、当然いろいろなギターも使用している。
そういや、初来日の渋谷では、ゲインが足りなかったのか、レスポールを弾いている時が多かったっけ。
(最終日の川崎ではストラトに戻った)

その他ES-335やSGも良い音をさせて弾いています。

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ギタープレイのスタイルとしては、いろんなジャンルを吸収して昇華したタイプ。
(ありきたりな表現だけど…)
クリーントーンでの、ジャズ、カントリーはお手の物。
特筆するのは、独特なボイシングのコードワークがある。
「ウソだろ!」って思うようなストレッチフォームが普通に出てきちゃう。
また、人工ハーモニクスのアルペジオや、右手を巧みに使った「琴サウンド」も良くやる。
これらのテクニックを駆使して、とてもスケール感の大きい音楽を奏でるのが魅力です。

リードでは、いわゆる超速弾きはないけど、ペンタトニックやコード構成音を中心に、一気に高低を駆け抜けるプレイが気持ちよいです。
速弾きでたたみかける、というよりは、速い音の効果をうまく使ったフレージングだなぁって感じ。
とはいえライブでは、たたみかける鬼弾きプレイも連発するけど。
コードワークとは違い、あまり小指を使わないけど、ポジション移動のスムーズさは、感心を通り越して呆れるほど。
ピッキングのスムースさも驚くけど、あの左手瞬間移動は絶対マネ出来ない。
指板を縦横無尽に駆けめぐる…ってのは今時のギタリストにとっちゃアタリマエだけど、やっぱりそこから奏でられるサウンドが、とても気持ち良いものです。
また、人工ハーモニクスでメロディを弾いたり、スライドでデリケートな表現もすごーくウマいです。

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フュージョン畑の人たちも、様々なボイシングで魅力的な音楽を作り出していくけど、EJの場合は、やっぱりロック。
この人、根がジミヘンフリークなだけあって、同じ匂いがすごくします。
サイケデリックから感じられる、甘酸っぱいロマンチックの含有率がとても高いんだよね。
多分この人は、ジミヘンと同じ景色が見えていると思います。
とはいえ、ドラッグはモチロン、タバコもやらない菜食主義者らしく、毒の無いロックだけど。
ジミヘンといえば、EJの1989年収録のライブCD/DVD「Austin City Limits」に収録されている、「Are You Experienced」のプレイは、すげえ!
比較的オリジナルに忠実な演奏だけど、中間部のソロでは、例のテープ逆回転プレイを、ボリュームコントロールとフィードバックで再現している。
よっぽど練習したんだろうなぁ。
マニアじゃないと、こんなこと出来んよ。
フィードバックのコントロールがまた、完璧なんだ。
イカれてる。
んで、曲の後半は、EJならではのギターパフォーマンス。
クランチ・チャネルでAのコードをホールドしてバックに流し、雄大なシングルノートのフレーズと幻想的なコードワークが展開していく。

ジミが表現したかったモノを、解りやすく解説してくれているような気分になりました。

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それにしても、このプレイや、同盤収録の「Cliffs of Dover」のイントロで聴ける、ディレイ・ホールドを使ったプレイは、本当に素晴らしいっす。
もし、「1コードで何かやれコンテスト」ってのがあったら、金メダル最有力だと思う。
最初の教則ビデオ「Total Electric Guitar」で、お別れの挨拶をした後に弾きだす小曲も、ディレイ・ホールドを使って素敵な演奏をしている。
ちなみにオイラがEJのプレイの中で一番好きなのが、この名もない小曲だったりします。

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こうして文章を書いてみると、どうしても90年前後のパフォーマンスが中心になっちゃう。
やっぱり2005年リリースの「Bloom」には、不満タラタラなわけで…
良い曲もあるし、トーンが変わったとは言え、素晴らしいサウンドが収録されているのは確かなんだけど、それまでのEJサウンドにあった、スケールが大きく、甘くて、幻想的で、ロマンチックな雰囲気が感じられないんだよね。
てゆーか、曲が短すぎるよ…
盛り上がってきて、「さぁてギターソロだ」と思ったら終わっちゃう曲が多いよ。
あと、マジジャズやマジカントリーは、もういいよ。
そういうのが聞きたかったら別のプレイヤーのを聞くから…
時とともに趣味嗜好が変わるのは当然だけど、G3プロジェクトで増えた、ハイテクを期待する連中へのアンチテーゼと思うのは深読みしすぎか…
「Victory」のような、EJにしか出来ない曲は、もう期待出来ないのだろうか…
あの鼻血がでるほど素敵なリードトーンは、もう聞けないのだろうか…
確かにロックアーティストとしては、年寄りの部類に入ってきた。
でも見た目はまだ若い!
某スローハンドのように老け込まないで、アツいギターを聞かせて欲しいと
切実に思います。